ラジコンに限らず、趣味は人生を豊かにする。この趣味があるから毎日頑張れる。嫌なことも乗り越えられる。そんな心の支えになるのが本当の趣味。ワタクシゴトで恐縮だが、ラジコンという趣味に救われた話であります。
夫婦喧嘩の翌朝
結婚十数年目。普段から格別おしどり夫婦というワケではない、metabonz宮夫妻。
夫婦喧嘩は犬も食わない・・・
昨夜も些細なことから口論に。
原因は食器の洗い物を拭かずにスマホを眺めていた、という、世間的には、まあどうでも良いであろうコトに端を発し、お互いに段々とヒートアップ。
常日頃のストレスも乗っかっちゃったりして
売り言葉に買い言葉。強まる語気・・・
子どもたちに「やれやれ」という嫌気が刺した表情がのぞく。
・・・・・マズい。何とかしなければ。
その場はなんとか納めようと、「俺は悪くないぞ!」という言葉をぐっと飲み込み、
こちらが折れ、なんとか話を終わらせる。
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子どもたちを寝かしつける。
嫌なことは寝て忘れようと、布団に入るが、ヒートアップした脳はなかなか眠らせてくれない。
さらに話し合うべきか?白黒はっきりさせるか?
どうにも納得がいかない自分が居座る(笑)。しかしもう分かっている。
相手を言い負かしても何の解決にもならないことを・・・・
翌日。仕事に出掛けた後、ふと思い立ち、職場に休みの連絡を入れる。
コロナ禍ということもあり、休みは割と簡単に取れた。(体調が悪ければ話は変わるが)
イライラしたまま仕事に行きたくなかったし、なんとか前向きな気持ちに戻したい。
1番の理由はどうにもやる気が起きない・・・ことだった。
ふと自分1人の時間が出来たら
こんな時は気晴らしにドライブか?
映画でも見るか?
静かな図書館で読書か?
いや、美味いものを腹一杯喰らうか?
それとも普段できない1人ラジコンか?
・・・・昨夜の精神的ダメージから、何もしたくないのが正直なところだが、経験からいえば、何もしないでダラダラ過ごしても事態は良くなったことはない。
そんな中で選択したのが1人ラジコン。
コロナ禍で、人が多くいそうな場所はちょっと行く気にならないし、外食もドライブも気分じゃない。
ならば、一人で黙々とラジコンを走らせるのはどうか?
いつもは息子が走らせることを優先し、調整や修理に時間を取られて自分が走る時間がほとんど取れないからだ。(親子ラジコン、それを良しとして来たが)
重い腰を上げて準備、出発
自宅に引き返し、ソファに腰掛けたのが不味かった(笑)。愛犬と戯れ、テレビの電源を入れたらアウトだ。
しかし、グッと気を取り直しラジコンの準備をする。
ラジコンのネックは荷物が多いことだ。
もちろん、公園や広場を走らせる野良ラジコンならマシンとバッテリーとプロポさえあればいい。
さすがに今日は野良ラジコンの気分ではない。
人目も気になるし、バッテリーが切れたら終わりだ。
とにかく、何かに集中したいのだ。
サーキットをひたすら走りたい。そんな気分。
いつもなら、オフロードバギーを選択するのだが、荷物を少なくしたいので、最近やっていないオンロードをやることにした。
マシン一台(タミヤ TB05)に工具箱、バッテリー、プロポ、最低限のパーツ類。
ラゲッジに詰め込んだら出発だ。
心のオアシス、GBサーキット
平日の午前中。今日は他に客はいないらしい。
つまり、貸切だ。何という贅沢。
いつも対応してくれるのはGB会長。御歳77歳。1年365日、ほぼ休まずサーキットを管理している。筆者の父親とも歳が近いので、なんとなく他人とは思えないのも、ここが好きな理由の一つである。
気さくで話好き。よく人を見ていて、的確な評価をする切れ者だけど、余計なことは言わない。さすがである。
私は会長とひとしきり何気ない世間話、お喋りを楽しむことで、強張った心がほぐれるのを感じる。
雑談しながらピットを広げる。バッテリーを充電し、タイヤを取り付ける。
そういえば、自分のためにラジコンを走らせるのはかなり久しぶりだ。
今日の相棒に選んだのはタミヤ TB05タミチャレ仕様。15.5ターンのブラシレスモーターをリフェバッテリーで駆動する。タイヤはレーシングラジアル。
ボディはRE雨宮GT300。RX-7好きの息子のチョイス。
息子のメインマシンがTA08に変わった為にお下がりで自分が駆ることになった。簡単に言えば息子のお下がりだ。
ただ黙々と走らせると
GBサーキットのオンロードコースはコンパクトかつ、テクニカルなレイアウトがウリだ。
ストレートが短いので、いかにインフィールドをロスなく走れるかでタイムは大きく変わる。
・・・なんてもっともらしく書いているが、自分自身ツーリングカーをレーススピードで走らせることができない初心者・初級者である。
なんとかぶつけずに周回はできるが、速い人たちについて同じように走ることはまだできない。
まだ、と書いたのは、きっと練習すれば走れるようになる!という自分自身への期待と願いから。
今まで息子のレースの為にマシンを組んで、不具合があれば修理、メンテナンスはやって来たが、恥ずかしいことに息子と同じスピードでは走れない。
だから、いつかちゃんと練習して走れるようになりたい、とずっと想いを暖めて来た。
偶発的に休みをとって出来た時間。
ラジコンのオンロード練習に使うことに、実は潜在的な欲求があったんだ、走らせながら気づいた。
そもそもなぜ上手く走れない?
最初はおそるおそる走り始める。
コースの真ん中を、スロットルを半分までしか開けずに何周か走ってみる。
大丈夫だ。なんとかぶつからずに走れる。
では、とスピードを上げてみる。
途端にダメだ。直線では左右にふらつき、コーナーでは大回り。
うまく曲がれずにフェンスに突っ込もうとする。この状態で長いこと留まっていた。
これは・・・・・・
スロットル(アクセル)とステアリングが全くリンクしていない・・・・
実車なら自然にできることが、外からの視点であるラジコンでは全くできていない。
原因は、ラジコンならではの視点の持ち方にあった。
実車の場合、コースレイアウトを把握した上で、目の前のコーナーに対処していく。その次のコーナーがある場合はそれを意識してラインどりをする。
ラジコンの場合は、自分の視野を広く持ち、直線とコーナー、コーナーとコーナーを繋いで考えながらラインを描き走らなくてはならない。
以前、ベテランの方が息子にアドバイスをしていた言葉を思い出す。
「コーナーを一つずつじゃなくて、全部線でつないで考えるんだよ。」
その時は「我が事」として捉えていなかったので「そんなもんか」位にしか思っていなかったが、今やっとわかった。
ラジコンはドライバー視点と同時に引きの視点も持ち合わせて走らせないといけないのだ。
・・・・・わかったら、後は練習あるのみ。
LF2200バッテリーは連続走行でも十数分で充電が切れる。ちょうどオジサンの集中力が切れるタイミングとマッチしていていい感じだ。
充電しながらコーヒーブレイク。タイヤやサスアーム、ダンパーなどを一通りチェックする。
マシンのどこかがおかしいまま練習してもあまり意味がないからだ。(息子のメカをしながら分かったコト)
気付けば6パック。練習に没頭
写真がピットの物ばかりなのは、走行に集中しているから(笑)
しかし、オンロードの走行がこんなに面白いものだとは知らなかった。ただやみくもに走らせる(それも楽しいけど)のではなく、考えながら走らせる。
だんだん、自分のマシンが愛おしくなってくる。なんて健気に走ってくれるんだコイツ!!
(正直に言えば息子のおさがりなのもあって、今まではあまり愛着はなかった)
気が付けば休憩を挟みながら、バッテリーを6パック走らせていた。新品だったタイヤも溝がかすれるくらいにツルツルだ。
今まで息子の練習に付き合うことはあっても自分だけでこれだけ走らせたことはなかった。
徐々に意のままに走ってくれるようになるマシン。これは楽しい。
アドレナリンが出ているのが分かる。・・・・・しかし非情にもここでタイムアップ。
すっかり冷静さを取り戻せた
ラジコンをひたすら走らせる・・・・・そして気付けばイライラや怒りはどこかへ消えていた。
「どっちがどう悪い」「言い方が気に入らない」「いつも悪いのは自分ばかり」・・・・という不満はどういうわけか全く姿を現さない。
あるのは、ただ心地よい疲労感と満足感。そして遅ればせながら芽生えたマシンへの愛情。
よし。
思い立ってサーキットの帰り道、酒屋に寄る。
妻の好きなワインを買った。
「どんな顔するかな」
嫌味を言われてもいい。今の自分の心は太平洋並みに広い。
Metabonz宮
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