勝利への道はある種の狂気が必要なのかもしれない。
狂っている。常人から見れば異常とも思える情熱、想いが交錯するのがレース。
誰よりも速く、誰よりも前へ
ドライバー、メカニック、応援する人、皆の想いを乗せて1/10のマシンが力強く大地を蹴る。
だからこそ、どんな草レースだろうとそこにドラマが生まれるのだ。
その場でしか味わえない、カタチのない想い。
それを共有するために、僕たちはある種の狂気に身を任せる。
あきらめるのは嫌なんだ
2WDオープン決勝。
この日は予選から好調で自己ベストを更新。
先週の練習が効いたようで、初のAメイン2番グリッドを獲得。
しかし非情にもポンダーチェック走行でサーボが壊れてしまう。
「ぐ、・・・・ここで?」
先々週予備のサーボを使ってしまい、手持ちのサーボはない。
万事休すか。
「サーボ、あるよ!」
佐藤さん、崎山さん、カイパさんの尽力で代替サーボに猛スピードで交換。出走出来ることに。
「ヒロキを決勝で走らせてやる!」
チームGBの熱い思いに震えた。
スタート。
先頭はささっきーさん。熟練、手練のテクニカルドライバー。普段はにこやかな紳士だが、レースになると熱い。
2位を守りながら慎重に走る。
いいぞ、丁寧な走りだ。
インフィールドS字で集団に巻き込まれて順位を落とすも、したたかにすぐ順位を上げて行く。
今までだったら、カッとなってミスを連発する場面だ。
レース開始から1分20秒、3連ジャンプを超えたRB7が右にマシンを寄せた。
サーボホーンが折れていた。
さすがにこれは仕方がない・・・ガックリ肩を落としたその時、カイパ氏がマシンを持ってピットに走る。
「諦めるのは、俺は嫌だ。」
凄まじい速さでフロント部をバラしサーボホーンを取り替える。
しかし、後少しと言うところでタイムアップ。
「ごめんな、ヒロキ」
時間がないのは分かっていながら、無理かもしれないと分かっていながら、必死でマシンを直してフィールドに戻そうとするアツさに、思いに、不覚にも涙が出てしまった。
こうやって海飛さんとやってきたんだな。
レースの世界で戦うこと、その意味を噛み締める。
パパメカニックが諦めてどうする。
「気持ち切り替えて四駆行こう!」
カイパ氏の笑顔に大きな勇気をもらったヒロキと、ワタシだった。
4WDオープン決勝
4WDは予選から絶好調。
初のTQを獲得してのスタート。
しかしその裏側にはカイパ氏の細かな助言があった。
予選1回目、暫定TQ。
しかし、調子が良いからと言ってそのままにせず、タイヤ剥がれやビスの緩みを必ずチェックすること。
ホイールとボックスナットの干渉や、ガタをみつけ、ヒロキがいない時にさっと直しておくようにと指示をもらう。
子どもを不安にさせない配慮。
子どもにとってパパが1番。信頼して走れるように全力を尽くすのだ、と。
その繰り返しが結果を呼ぶのだ。
スタート。
綺麗に決め、トップで3連へ。着地が乱れ4位へ後退。
さすがエキスパート揃いのGB。そう易々とトップにいさせてはくれない。
イシゲさんの走り、特に夜、路面が悪い時の走りは鮮烈だ。
路面は夜露と地面からの水分でスリッピー。四駆と言えども神経をすり減らしながらの走行。
またもやインフィールドで後続と絡み、順位を下げてしまう。
しかし、そこからが違った。
冷静に周回を重ね、2位に1秒のところまで追い上げて3位フィニッシュ。
GBで走り始めて約2年。
初のモデ四駆の表彰台をゲット。
しかし、ヒロキに笑顔はなく、悔しくて仕方ない様子。
初めてのTQに緊張し、1番を取る難しさに悶えた決勝だったという。
〜限界を超えてゆけ〜
レース後、カイパ氏に四駆の稽古をつけてもらう。
「そこ握って、もっと行けるよ!」
声かけに応えて走らせるヒロキ。
「まだマシンの限界の中で走らせてる。良いよ壊しても、もっと行こう!」
もはや路面はズルズルの中、カウンターを当てながら握る。
「限界を超えていく。」
これが私たち親子が目指していくことなのかもしれない。
今回、初めてレースを観ている方からマシンを褒められた。
「全然跳ねてないし、良く走ってるよ!」
「マシンも良いし、ドライバーが良いね!」
夜な夜な指先を真っ黒にしてメンテしながら、
「あー、何やってんだろ。」と虚しくなることもあった。
親子2人の思いがシンクロして走る。そのために日々頑張るのだ。
そしてレースで得た様々な想いを胸にまた日常へと帰ってゆく。
今回もたくさんの方にお世話になり、楽しくレースができた。
ありがとうございました。